映画 『 パプーシャの黒い瞳 』
幼い母親から、人形(パプーシャ)と名付けられたジプシーの赤ん坊は、
少女になり文字に興味を持つようになる。
文字は、ガジョ( ジプシー以外のよそ者 )の呪文、悪魔の力だとジプシーたちは忌み嫌ったけれど、
パプーシャは、街の白人に読み書きを教えてほしいと頼み、文字を覚えてしまう。
15才で年の離れたジプシー演奏家と結婚、
彼女の詩の才能を発見した、詩人イェジ・フィツォフスキとの出会いと別れ、
本を出版したことでジプシー社会から追放されるなど、
激動の人生を歩んだ、実在のジプシー詩人 プロニスワヴァ・ヴァイスの物語。
映画『オーケストラ!』 の陽気なジプシーたちと、
パリを旅行したときに、スリだから気をつけてと、嫌われていたジプシー。
ジプシーになぜか惹かれる。
酒場で演奏をして、留置所に一族ごと入れられても、歌い踊り続けているところはとてもおもしろかった。
ひとりの看守が頭をかかえる横で、あまりに楽しそうに音を奏でるので、もう一人の看守はちいさくスウィングしている。
物語は、ジプシー達を強制的に定住させる政策が施行された後へと続く。
文字は、ジプシーのつらい歴史を残すものだからといって嫌う、
パプーシャがよそ者のガジョに、ジプシーの誇りを売ったと長老たちは怒る。
ヨチヨチ歩きのときから細胞に染みこんでいる、民族のリズム、音、
共有している感情や言語は、我々のもの、
という強い集団意識と閉塞感が伝わってきた。
日本語独特の響きにも、近いものがあると思う。
モノクロで静かで、好きな映画。
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