映画 『 ピーターブルックの世界一受けたいお稽古 』
偉大な演出家、ピーター・ブルックの2週間に渡るワークショップに密着したドキュメンタリー。魔術的と称される演出家が、第一線で活躍する俳優やダンサーたちに演技指導をしていく。
静かな語り口のなかに散りばめられた、彼の人生哲学と、5台の隠しカメラが捉えた、参加者たちの変化が見どころ。
ピーター・ブルックの演技指導では、かならず絨毯が使われるのだそう。
おおきな絨毯の上は、彼の結界のようなもので、例え稽古場がどこであっても、区切ったそこのなかにいつもと同じ空間をつくる。
参加者たちは、まず綱渡りをさせられる。
絨毯の上にロープが張られていると仮定して、そのロープの上を好きなように歩いて進む。
想像力を駆使する作業で、体に信じ込ませないといけない。不安定な揺れるロープの上を、どう歩くか。
抜群に上手かったのが、舞踏家のシャンタラ。
映像でアップになると、ゾクッとするほど神経が研ぎ澄まされていて鳥肌が立った。
深い絶望を、髪をほどく動きだけで表したときは緊張感で息を詰めた。
内面の動きは見えないのだけど、舞台を観る人にはそれが赤裸々に伝わる怖さ。それをピーター・ブルックは熟知しているし、ワークショップに参加したプロの俳優たちも理解している。
じゃあ、表現者としてどのようにその壁を乗り越えていくか。
とくに特別なことを言うわけではないので、哲学書を読めばきっと同じようなことが書いてあるだろうけど、
すごいなと思ったのは、ピーター・ブルックの観察力で、隙を見せたらザクッと切られそう。
演じることから、如何に離れるか。
力みも深読みも、心の動きも見透かされてそうで、直接に指導を受けたらきっついだろうなと思った。
優しそうなおじいちゃんなんだけどね。
俳優のヨシさん、音楽家の土取さんは味わい深い魅力があって素晴らしかった。
土取さんは素晴らしい名脇役。
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