ハリネズミのいた生活
2017.12.03
すこし前に、飼っていたハリネズミが死んでしまった。
2、3日はもう、林檎のすりおろしたのを舐めるくらいで、ずっとクークー寝ていて、最後はお目目を閉じて、可愛いお顔のままでした。
5年近く一緒に暮らした。
夫が、「ちゃんと食べて良い子だね」と最後まで励ましてくれたので、優しさに泣けた。
ちゃんと食べて良い子だった。
光や音に敏感で、警戒心が強くてよく針をたててたけれど、
最後までご飯を食べようとした強さ。ありがとう。
良い子だったな。本当に可愛かった。
先日、友人に付き合ってもらってボートに乗った。白鳥さんではなく手漕ぎボート。
ワンワン泣くだけ泣いたので、笑って思い出が話せるくらいに回復した。
ハリネズミのいる生活
ギザ耳の治療もひと段落。
近寄ってきては、背を向ける。
愛しい子。
ハリネズミのいる生活
ご飯の時間。
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小説 『 夜が来ると 』 フィオナマクファーレン 著
夫を亡くして、海辺の家にひとり暮らす75才のルースは、ある夜明け、家の中で大型の虎が動きまわる音と息遣いを感じた。
その日、ルースの元へ女性が訪ねてくる。
自治体がよこしたヘルパーだと名乗る女性フリーダが、ルースの生活と心に忍び込み、家に根を張り、操り、奪っていく物語。
がつがつと食べつくす猫たちを見守った。この食べ方はどこか聖書を思い出させると感じた。 疫病に似ているのだ。
.....
身に余る欲求不満を感じたときだけ使える、別の言語を知っていればよかったとルースは思う。
あまりにも掃除が行き届いた家は、自分に言わせれば、殺菌力のある猫の舌ですみずみまで舐めまわされたかのようで、かえって不快感があった。
ぐいぐいと引き込まれる。
ルースの人格や、生い立ちを丁寧に描写することで、
彼女はどのように受け取るか、どこで不安に思うか、度胸、プライドがどうでるか、
読み進めながら少し見当がつく。
なので、彼女を絡め取るために張られた罠に気付いてしまうのが怖い。
ルースは罠に落ちるだろう、落ちた、この罠にもハマるだろう、落ちた、、
と、一つずつドロ沼に埋もれていくのを見せられる。
妄想ではなく痴呆。
ハリーが亡くなって以来、ルースは何かをしたいと思うことがほとんどなくなっていた。フリーダは欲する人だった。床をきれいにしたいし、ウエストを細くしたいし、髪の色もしょっちゅう変えたい。フリーダはみずからの欲望で世界を満たしていた。ルースはそれが羨ましかった。あんなふうでなぜいけない?
どこで転換したんだろうと読み返したときに、この一文でハッとした。
密室のなかで相手への依存を深めていくとき、欲望をまっすぐ見せられると、安心するんだね。
痴呆が一気に進む。
そしてルースは安らかに騙されていく。
あまりにも安らか、彼女は自分で選択したと、自分で感じている。
詐欺に合わないためには、ある程度騙しのテクを知識として知っておくべきだけど、
これは、騙された高齢の母よりも、息子たちの気持ちになってしまう。
振り返ると、守れたかもしれない、でも、やっぱり彼らがその都度選んだことは最善だったと思う。
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漫画 『 おふろどうぞ 』 渡辺ペコ
おふろっていいね。
実家が阿蘇山の麓なので、帰省するとほぼ毎晩、母と温泉にいく。
田舎のおばちゃん、おばあちゃんたちの裸の大らかさ、なじんだ方言のなんともいえないもっちゃりした響き、湯けむりのなかゆらゆら揺れて、
肩まで温泉にそっと浸かると、ああ、帰ってきたぁと体が落ちつく。
母と電話していて、よく行っていた温泉が地震のため営業停止したと聞いて、胸がズキンと痛んだ。
気持ち良いものと、痛みは、すぐ裏表にあって、そんなことを思い出す幾つかの短編。
第6話〝 連れ込み風呂 〟の、
「ちょっと恋しいけど でも もう いいわ」
「喜びも楽しみも もうじゅうぶん もらったもの」
という言葉がよかった。
「 もう じゅうぶん もらったもの 」
消化して、生きていくのがいいなと思った。
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ハリネズミのいる生活
そろそろ爪切りしなくては。
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