小説 『 ふたりの老女 』
アラスカ・インディアンに語り継がれる 物語。
北の地に住むアラスカ先住民たちは、
ある年、
極寒の冬を迎え、餓死寸前の全滅の危機にさらされた。
部族のリーダーは、
ふたりの老女を置き去りにすることを決める。
生き残るため、ふたりの必死の旅がはじまった . . .
部族のなかで、伝統的に口から口へと語り継がれてきた 「 物語 」が、
本になり、
こうして読めたことを幸運に思う。
世代から世代へ繋ぐ、知恵のGIFT。
老いて、弱者の特権に甘んじて生きていたふたりの老女は、
棄てられてから気づく。
弱者にみられようと無力なふりをずっとしてきた、
なので、若い彼らは、
わたしたちを役に立たないものだと信じるようになったのだ、と。
ふたりの老女が極限で気づいたこと、
奮起したふたりの生き様が、
率直な語り口で胸を打つ。
これは、現代にも一脈相通じるおはなし。
ひとりの人間の内には、
かき集めれば、信じられないほどの勇気や知恵が湧いている。
私は虐げられている、
傷つけられた、自分は弱いのだ. . . と、
弱者の立場に自分を置いて、自己を主張するようになったら、
勇気は必要がなくなり、知恵は影をひそめてしまう。
人間がこの世で果たすべきことをする能力には限界などないこと。
年をとったから、女性だから . . .
などということはないこと。
ほんとにそうだ。
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