映画 『 ザ・トライブ 』
この映画は、
リモコンの消音機能が有り難かった。
全体としては退屈で、
こちらの常識が通用しない異国に行ったときに感じるような、
ひんやりとした薄いガラス越しの距離感。
字幕なし、台詞無し、手話のみ。
環境音の使い方が秀逸で、もし私が聾者だったとして、
その場にいたら気配で分かるような、肌に響くような音だけが聞こえた。
例えば、乾いた落ち葉がカサコソと擦れる、
金属器具のカチャカチャという無機質な響き、
粗暴な足音、怒りにまかせた衝撃音、、
空気を振動させる響きにすこし色がついているような音。
その使い方がとても上手で、
だからこそ本当に音が恐い。
後半の中絶と殺害シーンは、正直ほとんど目を伏せていて、
気配でストーリーを追っていたのだけど、
解釈が分かれると思う。
気になって色々な人のレビューを読んでみたけど、よく分からなかった。
彼は彼女を救いたかったのか、
逃げないようにパスポートを噛みちぎったのか。
滑らかな手の動きに見とれた。
以前〝 五感を磨く〟という、地水火風空の五大の印を教えていただいて、
気に入って続けているのだけれどこんなに綺麗に指はまだ動かない。
演じたのはすべて聾者の方なのだそう。
彼らの手は、習慣のそれだ。
耳は敏感に音をすくい上げるので、言葉は、否応なしに意図しない情報も含んでしまう。
手は、音で交わす言葉ほど、余計なものを含む隙がないのだと思った。
聴覚と視覚の違いについて興味をもった。
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